共有型意思決定支援ツール

3.共有型看護相談モデルの活用方法

1)本モデルの適応となるがん患者

がん告知後に医師より治療の選択肢を提示されている方

がん療養法の選択時に意思決定サポートを必要としている方

20歳以上で、重篤な精神障害がなく日本語でのコミュニケーション能力に障害がない方

がん療養相談業務に従事する看護師が面接対応した方

2)モデルの活用に向けた手順と留意事項

手順1:意思決定プロセスの支援を要するがん患者を取り巻く環境を理解する。

患者が、がん治療や療養法をどのように現状認識しているのか確認する。

現在直面している問題について、患者から明確に語られる場合と不明確な場合がある。抱えている問題や相談内容が不明確(構造化されていない)場合には、主たる問題の関連要因を含めた全体像を把握するめに情報収集を行う。

患者が、がんの療養生活に関するリスクや重大性、予防策、利益、代替案、不確実性、対応するサービスなどをどの程度理解しているか確認する。

患者が自らの価値観に気づけるように支援する。

ここでは、4-3)に示す、がん患者の意思決定場面における看護療養相談技術のうち相談技術1,2を主に用いる。1(感情を共有する),2(相談内容の焦点化につきあう)を主に用いる。

患者のセルフケア能力が高い場合には、Webサイト「がんになっても・・・あなたらしく納得のいく生活を送るために~意思決定の進め方~」http://sdminoncology.sub.jp/を紹介する(こちらのWebサイトでは、①“こころ”の安定を取り戻す、②現在の状況を確認する、③方向性を決めるための道しるべの3つのStepが示されています。また、がん関連情報へのリンク先表示があります)。


手順2:がん患者さんの意思決定プロセスを共有する。

患者からの相談内容や抱えている問題の状況に応じて、共有型看護相談モデルにある9つの技術(詳細は4-3)項参照)を用いて意思決定支援を行う。

① 感情を共有する
② 相談内容の焦点化につきあう
③ 自分らしさを生かした療養法づくりに向けて準備性を整える
④ 治療・ケアの継続を保障する
⑤ 患者の反応に応じて判断材料を提供する
⑥ 情報の理解を支える
⑦ 周囲のサポート体制を強化する
⑧ 患者のニーズに応じた可能性を見出す
⑨ 身体状況を判断して潜在的な意思決定能力をモニターする
意思決定支援のプロセスの中で常に留意しておくことは、①患者の状況に意図性をもって沿う(患者の世界に入り状況を把握する)、②意思決定に向けて患者・看護師それぞれの役割を明確にする、③専門家の視点から患者の状況を確認しケアを提供することがあげられる。

患者の意思決定プロセスを看護師が共有する時には、患者の中で起こっている内的変化(意思決定に向き合う力が引き出される、問題に向き合うようになる、自分のニーズ・役割・目標・価値観・役割を認識する、関連要因(内的・外的)を調整する、コントロール感覚をもつ、代替案について、予測や評価する)を捉えながら対応する。

患者のニーズに応じて情報提供を行う時には、その情報が本当に患者に必要なものかどうかを見極めてから提供する。

最終的には患者自身が決定した結論を尊重し見守ることとなるが、この結論には「自分自身では意思決定せず、誰かに決定を委ねる」ということも含めて捉える必要がある。

ここでは、4-3)に示す、がん患者の意思決定場面における看護療養相談技術のうち相談技術3(自分らしさを生かした療養法づくりに向けて準備性を整える),4(治療・ケアの継続を保障する),5(患者の反応に応じて判断材料を提供する),6(情報の理解を支える),7(周囲のサポート体制を強化する),8(患者のニーズに応じた可能性を見出す),を主に用いる。

今後の療養生活の再構築ができるようサポートする。

ここでは、4-3)に示す、がん患者の意思決定場面における看護療養相談技術のうち相談技術9(身体状況を判断して潜在的な意思決定能力をモニターする)を主に用いる。

手順3:患者さんの決定を尊重し見守る。

患者が、「今後の方向性について決定する」もしくは「納得できる方向性が見つかる」状況になったことを確認する。

意思決定プロセスにおけるこころの揺れ(葛藤・不安など)を安定させるよう働きかける。

今後の療養生活の再構築ができるようサポートする。

ここでは、4-3)に示す、がん患者の意思決定場面における看護療養相談技術のうち相談技術9(身体状況を判断して潜在的な意思決定能力をモニターする)を主に用いる。

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